前回の『あせりは禁物。雨にも負けず』のつづきです。
キッチンカーの輸送費20万円を払って貯金がスッカラカンになった男は途方にくれました。
男にはクレープの材料費とおつりも残っていません。これでは営業もできません。
男は夜寝る前に小人さんに相談しました。
「小人さん小人さん、どうしたら良いでしょうか?」
するとその夜ある夢を見ました。
それは、銀行口座をつくった時の回想シーンでした。
「口座開設ありがとうございます。
もしよかったらこちらも入りませんか?
カードローン。いざという時のお守りがわりに。
いざという時に50万円まで借りられます」お守りがわり。。どこぞの保険屋さんも同じようなこと言ってたような。
そう思った男はバシッーーっと
その銀行員に言い放ちました。「カードローン入ります。お守り代わりに」
かくして男はお守りがわりの保険証券とカードを胸にぶら下げて人生の大海原へと乗り出すのでした。
※
チュンチュン。朝
夢から目覚めた男はその日、
カードを使って3万円を借りました。材料費とおつり分です。
その数日後の水曜日、
男はあるスーパーマーケットの店先でキッチンカー初出店を果たします。男は不安でした。
「お客さんは来るだろうか?」
なにせ男にはまったく貯金がありません。
今日お客さんが来なかったら即廃業してもおかしくありません。
しかし、そんな不安とは裏腹にオープンして間もなく、お客さんがいらっしゃいました。
思ったより早くお客さんが来てくれたことに男は驚き、そして喜びました。
しかし、浮かれてばかりはいられません。
ちゃんとしたクレープを作って喜んでもらわなくてはいけません。
男は「集中集中」と心がけました。
なにせまだクレープづくりにも接客にもゆとりがありません。
ひとつひとつクレープを作って、一人一人ていねいに接客するだけで精一杯でした。
最初のお客さんにクレープをお渡しすると、次のお客さんが来てくれました。
またクレープをお渡しすると、次のお客さん。また次のお客さん。
クレープを作るだけで必死だったので気づかなかったのですが、顔を上げるとたくさんのお客さんが店の前にいらっしゃったのです。
男は無我夢中でクレープを作りました。
午後2時。男は準備した生地の材料がなくなってしまいました。こんなに来てくださるとは思わなかったのです。
男は店前にいるお客さんにお礼を言いつつ、品切れであることを謝りつつ、心の奥ではホッとしていました。
「今日一日生きながらえることができた」と。
男はその日の売り上げで次の日の材料を買うことができました。
※
次の日、男は同じ場所で営業を開始しました。
気持ちは昨日と同じく不安でした。
「今日はお客さん来てくれるだろうか?」
開店すると、一人また一人とお客さんが来てくださいました。
男はその日も生きながらえることができました。
次の日もその次の日も、お客さんは来てくださって男は生きながらえました。
男は思いました。
「オレは生かされてる」
来てくださるお客さんとなんだかよくわからない不思議な力に男は「生かされてる」と感じたのです。
それから毎日毎日、男は生かされました。
男は毎日思いました。
今日も生かしていただきました。
ありがとうございます。そして「どうしたらもっとお客さんに喜んでもらえるだろう」と考えるようになりました。
※
それから3年3か月後。
男はまだ生かされていました。
お店に来てくださるお客さんとなんだかわからない不思議な力によって生かされていました。
男は思いました。
「オレは何をしてこの恩に報いればいいのだろう?」
男はある占い師に相談しました。
すると占い師は言いました。
「探し物は未来の新しい事ではなく過去にある」と。
「過去・・・」
男は思いを巡らしました。
占い師は続けます。
「これまで人知れずやってたことはない?」
人知れずやってたこと。。
いくつか思い当たることはあるものの、それがお客さんへの恩返しになるとは思えませんでした。
そこで男はブログを書くことにしました。
過去を振り返るブログです。
「そのなかに答えがあるかもしれない」そう思ったのです。
つづく