前回の『あせりは禁物。』のつづきです。
男は3か月のニート生活ののち、
牛乳を売る仕事につきました。一軒いっけんお家をピンポンして、
宅配牛乳をおすすめする仕事です。当初、男は思いました。
「これは無理ゲーだぞ」
なにせ昨今(さっこん)
牛乳はスーパーとかいう大商人が
「破格のプライスで販売してる」
という噂が飛びかっていて、ダウ平均1瓶130円代の宅配牛乳では
たちうちできないと思ったからです。
しかし、
そんな思いとは裏腹に
男の牛乳はポツポツと売れていきます。
たぶんマッチ売りの少女よりは売れていたと思います。
「マッチ売りの少女も牛乳売ればよかったのに..」
そんなことを思いながら男は
地元のスター賢治先輩のごとく
雨にも負けず風にも負けず
雪にも夏の暑さにも負けず
一年間、牛乳を売り続けました。
男は思いました。
「マッチじゃなくて牛乳でよかった」
「いやいや肝はそこじゃねえええべ」
男が頭の中で飼っている
小人さんがシャウトしました。
ミルモみたいなものです。
ミルモとは…アニメ『ミルモでポン』にでてくる妖精。主人公の女の子の相談相手。男は娘たちと一緒に毎日『ミルモでポン』を見ていて「オレにもミルモがいたらなあ」と思っていた。
そのミルモみたいな小人さんが
悪魔のようにささやきました。「おめえさん、接客がむいてるべ」
男はベギラマ級の衝撃をうけました。
ベギラマとは…
ゲーム「ドラゴンクエスト」の呪文の一つ。敵全体にダメージを与える中級呪文。なにせ男はこれまで肉体労働か
事務仕事ばっかりしてきたからです。
「接客なる仕事があるのかあああ」
「接客するにはお店だべ」小人が続けます。
男は思いました。
「一年間、牛乳売ったことで
自分が接客に向いてるとわかったべ
次はお店やるべ」焦りは禁物。
つづく