男は腹を決めかねていた。
ある男性から今度オープンする『きみにゃんテイカートカフェ』を手伝いたいという申し出があった。
その男性はあるお店で理容師をしているシュンちゃん。
これまでほぼ一匹オオカミでやってきた男にとっては嬉しくもあり、ありがたい話だった。
男には『楽しい嬉しい悲しい大変』を分かち合う仲間がいなかった。
なので、今のキッチンカーとは別にカフェをやろうと思った背景にはそんな理由も含まれていた。
本音を箇条書きにするとこんな感じだ。
<カフェを始める理由>
- キッチンカーの営業を少し減らしてちょっくら楽をしたい。
- もう少し儲けて貯金をつくりたい
- お客さんにクレープ以外の楽しみを提供したい
- 一緒に働いて楽しめる仲間がほしい
1と2に邪念がずいぶん混じっている。
儲け心があったので、
「カフェではパートさんを何人かお願いして..」と、正規雇用をするつもりはなかった。
「その中の一人としてシュンちゃんに手伝ってもらおう」と思っていた。
そんな折、シュンちゃんからこんなLINEがあった。
「店の人とケンカして『もうこの店辞める』って言っちゃいました」
あちゃーー
とはいえ、次の仕事が決まるまでは今のお店にいてもらえるようにはしてもらえたらしい。
なんと良心的なお店だ。
※
男は腹を決めかねていた。
シュンちゃんを正規雇用するとなると、
さすがに覚悟がいる。40代男性。奥さんと2人のお子さん。
家のローン、車のローンはあるのだろうか。。いろいろと背景が浮かぶ。
今のお給料はこれくらい。
社会保険料はこれくらい。頭の中でそろばんをはじく。
パートさん数人にお店を任せることに正直不安を感じていた。とはいえ、正規雇用してやっていけるのか?という不安の方が強かった。
まだ覚悟は決まっていない。
※
そんな折、友達からLINEが来る。
「ちょっとウチの手伝いしてほしい」男は気分転換にもなると思って
友達の手伝いに行く。友達は「この春から新しい会社を立ち上げる」
そして「3人雇用した」という。男は聞いた。
「人を雇うの怖くなかった?」
友達は言う。
「そりゃ怖いよ。
今でもビビってる。
売上つくれなかったらどうしようって」友達は続ける。
「でもね、一緒に働いてくれる○○さんが俺を信頼してくれてついてきてくれてるから、その信頼はうらぎれねえなって。」
「この人達の給料だけは確保しなきゃって思ってる。オレの給料はそのあとでいいやって。」
夜に仕事が入ってもいいように晩酌やめることにしたとも言っていた。
※
この話を聞いてさすがに男も思った。
「こりゃ覚悟しなきゃならないな」と。
男は4つの内の1と2を捨てることにした。
<カフェを始める理由>
1,キッチンカーの営業を少し減らしてちょっくら楽をしたい。
2,もう少し儲けて貯金をつくりたい3,お客さんにクレープ以外の楽しみを提供したい
4,一緒に働いて楽しめる仲間がほしい
つまり、我を捨てることにした。
すると、
カフェを始める理由がシンプルになった。<カフェを始める理由>
- お客さんにクレープ以外の楽しみを提供したい
- 一緒に働いて楽しめる仲間がほしい
「お客さんと仲間に喜んでもらう」
とてもシンプルだ。
つづく
我を捨てる。儲け心

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