前回の『あせりは禁物。その2』のつづきです。
むかし昔あるところに
牛乳売りの男がおりました。男は地元で有名なマイルドヤンキー
賢治先輩のごとく雨にも負けず
風にも負けず一年間、牛乳売りを続けた結果、
接客に向いてることを知りました。そんなおり、男のもとに
あやしい関西弁からの電話がありました。今度はクレープ売りをしませんか?
もうかりまっせ。と「あやしい」と思ったか思わなかったか
きっと思わなかったのでしょう。男は関西弁の話を鵜呑みにしました。
なにせ男の家の玄関には、
悪徳業者が貼ったと思われる「この人いけまっせ」シールが貼ってるほど
人を信じるタイプ。男はキッチンカーなるものを注文し、お世話になった牛乳販売店にも退職をつたえて、クレープ売りにそなえました。
が、
キッチンカーができあがる気配はありません。
「6月初旬にはできまっせ」だったキッチンカーが「出来上がりがちょい伸びます」に変更になっていました。
しかし、あせりは禁物です。
すると、牛乳店の社長さんから「後任が決まらないので、あと2か月退職待っとくれ」と言われました。
退職延期は男にとってもありがたい話でした。
「喜んで」と男は申し出を受け入れました。
とはいえ、7月末には無事退職をむかえ、男は晴れて人生3回目のニートになりました。
キッチンカーの製作状況は「順番待ちです。もう少しお待ちください」でした。
収入が途絶え、
いつできるか分からないキッチンカー
暇をもてあました男でも、あせりは禁物です。
牛乳販売店の女子数名から耳にした「クレープやるならインスタやらなきゃ」というキャッチフレーズを思い出しました。
『インスタ映え』とか
『映える~』的なことは聞いたことはありましたが、
正直なんのことかは知りませんでした。その映え写真を見せられても
「これの何が面白いの?」と思いましたが、
口には出しませんでしたし、
詩にすることもありませんでした。そのへんはさすが大人です。
マイルドヤンキーの賢治先輩とは違います。
とはいえ、
「インスタやらなきゃ死あるのみ」とまで言われてはやるしかありません(←そこまで言ってない)
男はキッチンカー待ちの状況を投稿しはじめました。
- 散歩でみつけた猫ちゃんをパシャリしては『散歩仲間。たぶんニート』
- クレープ作っては『これメニュー採用、こっち不採用』
- チラシつくっては『チラシ今日はロックハンド一丁目に配布』など
第3次ニート生活がはじまって約3か月。
インスタのフォロワーさんは1500人となっていました。
この数字が良いのか良くないのか男にはまったくわかりませんでした。
ニート生活が続いたことで、男の貯金はどんどん減っていました。
「でも焦りは禁物。前回のニート生活だってなんとかなった」と男は自分に言い聞かせました。
過去2回のニート生活が役に立った瞬間です(どうでもよいお役立ち)
すると「キッチンカーできたので10月〇日に納車します」と連絡が入りました。
「輸送費20万円です。現金でお願いします」との言葉も付け加えられました。
キッチンカー納車と同時に男の貯金は底をつきました。
でも焦りは禁物です。
「マイルドヤンキーの賢治先輩ならこんな時どうするのだろう?」
男は自問自答しました。
なんだかんだ言いながら男は賢治先輩をリスペクトしておりました。
つづく
つづきはこちら(^^)/『あせりは禁物。すっからかん』