キッチンカーを始めてしばらくすると、男にはイベントのお誘いがくるようになった。
スーパーマーケット前での営業が主であった男はイベントなるものがどういうものであるのかわからなかった。
とはいえ、何事もやってみなくてはわからない。
お誘いいただいたイベントに参加するようになった。
いくつかのイベントに参加して男は思った。
「これは弱肉強食の世界であるぞ」と。
人気のお店は行列をつくり、そうではないお店はその光景を横目にしながらすごす。
そんな明暗分かれる世界であった。
もちろんどのお店も行列だらけという大人気イベントも存在するにはするが、たいていのイベントは明暗分かれる結果となった。
男の店も例外なく、
明のときもあれば、
暗のときもあった。男は正直、競争や争いごとが苦手であった。
いや苦手というよりうんざりしていたのかもしれない。
男はこれまで典型的な男社会に身を置いていた。
家庭では兄がいたが女兄弟はいなかった。
学校では男だらけの体育会運動部であった。
仕事では男性社会の消防士が長かった。
「男だけだからカラッとしたもんでしょ」なんていうのは、勝手なイメージである。
男というのは女とおんなじで面倒な生き物である。笑
特に男だらけというのは面倒である。
女という監視の目があるからこそカラッと男らしさを演じているのであって、男も女も同じ人間であるからして、性根に大した差はないのである。
と、ちょっと文章を書く手にチカラが入りすぎてしまった。申し訳ない。
ということで、男は競争にうんざりしていた。
兄弟げんかをすれば必ず負けた。
弱いからでもあり、負けなければ終わらなかったからでもある。
ポジション争いがあれば「どーぞどーぞ」と言いたかった。
なので、キッチンカーでも当然そんな感じになっていた。
同じクレープのお店が出店する場所はおゆずりして自分は違う場所でお店を開いた。
イベントもお声かけいただいたものはありがたく参加したが、自ら大きなイベントに申し込むことはなかった。
結果、
男は根なし草のように転々とした。
『フーテンの寅さん』である。
『男はつらいよ』である。寅さんと違うのは、
- かわいい妹のさくらがいない。
その代わり兄はいる。- 毎回出てくるはずのマドンナ役がいない。
その代わりこのブログを熱心に読んでくれる男性のお客さんはいらっしゃると聞く。- 甥っ子の満男はいない。
その代わり姪っ子はいるしかし、男にとってその『フーテンの寅さん』状態は幸運であった。
なぜなら、それが人とは違うスタイル
『岩手33すべての市町村にクレープお届けします』につながったからである。
つづく